2025/04/14 11:49
顔面神経麻痺は、第七脳神経(顔面神経)が障害されることで、表情筋の運動がうまくできなくなる病態です。主に片側の顔面に筋力低下や運動障害が現れます。代表的な疾患には、ベル麻痺(特発性の顔面神経麻痺)やラムゼイ・ハント症候群(水痘・帯状疱疹ウイルスが原因)があります。発症要因としては、ウイルス感染、寒冷刺激、精神的ストレス、血行不良、自律神経のバランスの崩れなどが挙げられます。 東洋医学では、顔面神経麻痺は「風寒の邪」が体表から侵入し、経絡(気血の通り道)を塞ぐことによって発生するとされています。鍼灸によって気血の流れを回復させ、臓腑の調和を図ることで回復を促進します。 一方、西洋医学では、鍼灸刺激が神経や筋肉、血管に作用し、以下のような生理的変化をもたらすとされています。 鍼刺激は微小循環を促進し、損傷した神経や筋肉に酸素と栄養を供給しやすくします。これにより、神経の再生と機能回復が促されます。 近年の研究では、鍼灸が炎症性サイトカインの発現を抑制することが示されており、神経周囲の浮腫や疼痛の軽減に寄与することが分かっています。また、免疫系の調整作用も報告されています。 長期間の麻痺によって生じる筋萎縮や拘縮を、鍼刺激によって筋の収縮を誘発することで予防・緩和します。灸による温熱刺激も、局所の代謝亢進に寄与します。 鍼灸は、顔面神経麻痺の回復段階に応じてアプローチを変えます。 急性期(発症から2週間以内): 神経の炎症を抑えることが目的。 顔面部への直接刺激は控え、手足や体幹の経穴を使用して全身の調整を行います。 回復期(発症後2週間〜3か月): 神経再生と筋機能の回復が進行する時期。 顔面部への鍼刺激を行い、表情筋リハビリとの併用によって機能回復を図ります。 慢性期(発症3か月以降): 後遺症の軽減が目的。 シナキネシス(異常共同運動)や筋拘縮を緩和するために、左右の筋バランスを整える施術を行います。 鍼灸が顔面神経麻痺に効果的であることを示す研究が増えつつあります。 Frontiers in Neurology(2022):急性期のベル麻痺患者に対して早期に鍼灸施術を行うと、回復期間の短縮が見られた。 PMC7220144(2020):ラムゼイ・ハント症候群に対する鍼灸の安全性と有効性を検討したシステマティックレビューが実施されており、症状緩和への効果が示唆されている。 ScienceDirect(2018):慢性期のベル麻痺後遺症に対し、鍼灸が表情筋の機能回復に寄与することが報告されている。 これらの研究結果から、鍼灸は顔面神経麻痺に対する有効な補完療法として一定の科学的根拠があると考えられます。 鍼灸施術は、顔面神経麻痺に対して多面的に作用し、自然治癒力を高める補助療法として可能性があります。血流改善、神経機能の促進、筋の正常化など、さまざまな角度から回復を支援します。 今後さらなるエビデンスの蓄積が進めば、標準治療との併用による効果的な治療戦略としての位置づけが明確になると期待されます。 当院では、論文や症例をもとに施術を行っております。患者様の症状に合わせてベストな施術を行っておりますので、お困りの際はぜひ、ご相談ください。顔面神経麻痺と鍼灸施術について
鍼灸の施術理論:東洋医学と西洋医学の視点
1. 局所および全身の血流改善
2. 炎症の抑制と免疫調整
3. 筋萎縮と拘縮の予防
回復過程に応じた鍼灸アプローチ
鍼灸治療に関する臨床研究
おわりに