2025/02/14 12:36

鍼施術のしくみ 〜科学的な視点から〜

鍼施術は、昔から行われている東洋医学の治療法ですが、最近では科学的にもその仕組みが明らかになってきました。ここでは、鍼が体にどのように働くのかを説明します。

1. 神経への影響

鍼を刺すと、皮膚や筋肉にあるセンサー(機械受容器)が刺激され、神経を通じて脳や脊髄に信号が送られます。この刺激により、痛みを抑える働きを持つ神経経路が活性化し、痛みが和らぐ効果があることが分かっています(Langevin et al., 2011; Zhao, 2008)。

2. 体内の鎮痛物質(内因性オピオイド)の分泌

鍼をすると、脳内で「エンドルフィン」や「エンケファリン」といった鎮痛作用を持つ物質が分泌されます。これにより、痛みの感じ方が軽減されると考えられています(Han, 2004)。さらに、脳の働きを調べるfMRIという装置を使った研究では、鍼が脳の痛みを感じる部分の働きを調整することも確認されています(Napadow et al., 2005)。

3. 血流の改善と炎症の抑制

鍼の刺激によって血管が広がり、血流が良くなります。血流が増えると、酸素や栄養が体の各部にしっかり届くようになり、回復が早まります。また、体内の炎症を抑える効果があり、腫れや痛みを軽減することができると考えられています(Zhou et al., 2015; Kim et al., 2013)。

4. 筋肉や筋膜への作用

鍼は筋肉や筋膜(筋肉を包む膜)の緊張を緩め、体の動きをスムーズにする働きもあります。これにより、関節の動きがよくなり、筋肉のこわばりが解消されることが研究で示されています(Langevin et al., 2002)。

まとめ

鍼施術は、神経の働きを調整し、体内の鎮痛物質を増やし、血流を良くし、筋肉や筋膜の状態を整えることで、さまざまな症状を改善します。科学的な研究が進むことで、さらに詳しい仕組みが明らかになることが期待されています。

参考文献

  • Han, J. S. (2004). Acupuncture and endorphins. Neuroscience Letters, 361(1-3), 258-261.

  • Kim, H. W., Roh, D. H., Yoon, S. Y., et al. (2013). The anti-inflammatory effects of acupuncture and its potential applications in treating inflammatory diseases. Journal of Neuroimmune Pharmacology, 8(1), 148-161.

  • Langevin, H. M., & Yandow, J. A. (2002). Relationship of acupuncture points and meridians to connective tissue planes. The Anatomical Record, 269(6), 257-265.

  • Napadow, V., Kettner, N., & Liu, J. (2005). Functional MRI study of pain modulation by acupuncture in carpal tunnel syndrome. Neuroimage, 28(3), 601-613.

  • Zhao, Z. Q. (2008). Neural mechanism underlying acupuncture analgesia. Progress in Neurobiology, 85(4), 355-375.

  • Zhou, W., Tjen-A-Looi, S. C., & Longhurst, J. C. (2015). Acupuncture improves cardiac function and attenuates inflammation in rats with heart failure. American Journal of Physiology-Heart and Circulatory Physiology, 309(9), H1578-H1587。