2024/09/27 13:42

当院に、お布団に入ってからなかなか眠れないや夜中や朝方起きてしまってそのあと眠れない…このことで日常生活が維持できないといって来られています。

現在は、睡眠薬は頼らず、眠りに入るのに3時間かかっていたのが2時間になりました。まだまだ時間はかかっていますが、途中で起きることはなく、起きたときに寝た感じがあり、すっきり起きれるようになったそうです。活動時間も増えてきたそうで、睡眠のリズムを整えていくことを鍼灸と一緒にがんばっているところです。


不眠症について少し触れてみたいと思います。

不眠症は、十分な睡眠が得られない状態が続き、日中の活動や生活の質に悪影響を及ぼす症状を指します。典型的な症状としては、入眠困難、途中で目が覚める、早朝に目が覚めてしまう、または睡眠が浅く、休息感が得られないことが挙げられます。これらの問題が長期間続く場合、不眠症として診断されることがあります。

年齢に応じた平均睡眠時間

睡眠の必要量は年齢とともに変わり、個人差もありますが、以下は一般的な目安です:

  • 新生児(0〜3ヶ月):14〜17時間

  • 乳児(4〜11ヶ月):12〜15時間

  • 幼児(1〜2歳):11〜14時間

  • 就学前児(3〜5歳):10〜13時間

  • 学齢児(6〜13歳):9〜11時間

  • ティーンエイジャー(14〜17歳):8〜10時間

  • 成人(18〜64歳):7〜9時間

  • 高齢者(65歳以上):7〜8時間

これらの基準を満たさない場合、特に入眠や睡眠の維持が困難な場合は、睡眠障害がある可能性が高く、身体的・精神的な健康に悪影響を及ぼすことがあります。

不眠症の定義と入眠困難・覚醒の目安

不眠症は急性(短期間)と慢性(長期間)の2つに分類されますが、どちらの場合でも、入眠や覚醒に関する具体的な基準があります。

  • 入眠困難の目安: 通常、布団に入ってから 30分以上眠れない状態 が続く場合、入眠困難とされます。特に、入眠に時間がかかり、翌日の疲労感や集中力の低下が見られる場合、不眠症の兆候と考えられます。

  • 覚醒の目安: 夜中に 2回以上目が覚める、または一度覚醒すると 20分以上再入眠できない 状態が週に数回以上発生する場合、覚醒の問題として不眠症の一因とされます。また、早朝に予定より2時間以上早く目が覚めてしまい、再び眠れない場合も、覚醒に関する不眠の症状の一つです。

鍼灸施術と不眠症の関係

鍼灸は、身体の気の流れを整えることで、自然治癒力を引き出し、全身のバランスを整えることを目的としています。最近の研究により、不眠症に対する鍼灸の効果が注目されています。

たとえば、あるランダム化比較試験では、鍼灸治療を受けた不眠症患者の入眠時間が短縮され、睡眠の質が著しく改善されたことが報告されています(Zhao et al., 2015)。この研究では、鍼灸が自律神経に作用し、交感神経と副交感神経のバランスを整えることで、リラックス状態を促進し、入眠をサポートするとされています。

さらに、鍼灸は覚醒の問題にも効果が期待されています。別の研究によると、鍼灸を受けた患者の夜間の覚醒頻度が減少し、睡眠の持続時間が延長されたことが報告されています(Yeung et al., 2009)。これにより、鍼灸が夜間の覚醒を減少させ、より安定した睡眠を促すことが確認されています。

鍼灸の利点

鍼灸の大きな利点は、副作用が少ない点です。睡眠薬に依存することなく、自然治癒力を引き出して不眠症を改善することができ、長期的な効果が期待されます。特に慢性の不眠に悩む方にとって、鍼灸は安心して取り入れられる施術法として有効です。

結論

不眠症の症状に悩む方、特に入眠困難や夜間の覚醒に苦しむ方にとって、鍼灸は安全で自然なアプローチの一つです。年齢に応じた適切な睡眠時間を確保することは、心身の健康維持に不可欠です。鍼灸は、その睡眠の質を向上させ、健康全般に良い影響をもたらす可能性があります。


参考文献

  • Zhao, K. et al. (2015). Acupuncture for the treatment of insomnia: a systematic review and meta-analysis. Evidence-Based Complementary and Alternative Medicine, 2015.

  • Yeung, W. F. et al. (2009). A systematic review on the efficacy, safety, and clinical applications of acupuncture for insomnia. Sleep Medicine Reviews, 13(1), 73-104.

  • National Sleep Foundation (NSF)

  • World Health Organization (WHO)

  • American Academy of Sleep Medicine (AASM)